糖尿病について
糖尿病人口の現状
我が国の糖尿病人口は増加の一途をたどり、2016年の”国民健康・栄養調査”によると日本全国に糖尿病が1000万人、予備軍が1000万人存在すると推測され、合わせると2000万人となり、40才以上の4人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍になっていることになります。また、2001〜2010年の10年間の日本人の糖尿病患者の平均年齢は、男性が71.4才、女性が75.1才でしたので、糖尿病患者の寿命は糖尿病がない人と比べて男性で8.2才、女性で11.2才短くなっています。
糖尿病の原因
それでは近年どうして糖尿病が増加しているのでしょうか?
食事をすると血糖値が上昇し、膵臓から血糖を下げ
るホルモンであるインスリンが血中に分泌されます。このインスリンが体の細胞に作用することによって血中の糖分が細胞に取り込まれ、血糖値が低下します。インスリンの出が悪くなったり(インスリン分泌不全)、インスリンが出ていても効きが悪くなると(インスリン抵抗性の増加)インスリン作用不足となり、糖分が血中に停滞し血糖値が上昇してしまいます。日本人を含む東アジア人は、欧米人に比べると遺伝的にインスリン分泌能が低いといわれています。
昔より日本人は、魚類、野菜、米食中心の食事をしてきましたが、近年、食の欧米化で動物性脂質をより多く摂取するようになりました。毎日カロリーの多い食べ物を摂取し肥満になってしまうとインスリン抵抗性が増加し、インスリンの分泌が多くなるため膵臓が疲弊してしまい、ついにはインスリンを分泌する力も低下し、血糖値を下げきれずに糖尿病を発症することになります。
このような理由で、インスリン分泌能の弱い東アジア人は過食、肥満により糖尿病を発症しやすいと考えられています。もう一つの理由としては、現代人の運動不足が挙げられます。
車などの交通機関が発達し生活が便利になった反面、活動量、運動量が減ってきました。運動量が減ると消費するカロリーが減り、摂取するカロリーの方が多くなる結果、脂肪の蓄積で体重が増加し、肥満につながります。実際、脂肪摂取が多くなるほど、また車を所有するほど糖尿病が増加する相関関係も認められています。
糖尿病の症状
糖尿病のような高血糖状態では、血管内のブドウ糖濃度が上昇し、血管外(組織)との濃度の差が生じるため、その濃度差を是正するため(組織の)細胞から水分を血管内に引き込もうとします。
そうなると、血管内の水分が増え、からだは増加した水分を尿として排泄しようとするため多尿がおこります。
多尿と同時に組織の水分が血管内に奪われるため、組織の細胞は脱水状態となり、からだは口渇感を覚え多飲となります。
またインスリンの作用不足のため血管内に停滞したブドウ糖が細胞内に移行できないため、細胞にとっては重要なエネルギー源のブドウ糖を取り込むことができず、倦怠感や体重減少が出現します。
このような機序で高血糖による症状が出現しますが、治療により高血糖が是正されるとこれらの症状は改善されていきます。
ところが糖尿病の合併症の症状が一度出てしまうと治療は極めて困難になります。
糖尿病の合併症
糖尿病の治療を行わすに放置し、高血糖状態が持続すると、ほぼ全身に及ぶ合併症が出現します。
糖尿病の発症後は末梢神経や眼の網膜、腎臓のような細い血管が多い臓器に起こりやすく、両足のしびれや痛み、視力低下、浮腫(むくみ)のような症状が出現します。
一旦症状が出てしまうとなかなか後戻りができません。また、糖尿病を発症しても特に初期のうちは合併症の症状が出ないことが多く合併症の治療が手遅れになることがよくあります。
糖尿病の合併症が進行してしまうと、失明や壊疽に至ったり人工透析を余儀なくされ、毎日の生活の質が極度に低下してしまいます。
さらに重要なのは、動脈硬化を引き起こすことです。
脳や心臓を養う動脈に閉塞病変が起こると、脳卒中、心筋梗塞を引き起こし命に関わることになります。また足の動脈が侵されると糖尿病性壊疽を発症し切断を余儀なくされることもあります。
動脈硬化は糖尿病になってからではなく、糖尿病前段階の糖尿病予備群の頃からも発症することがあり注意が必要です。
また糖尿病があると認知症になりやすくなり、治療中低血糖を起こしたり食後高血糖があるような場合、さらに認知症が発症しやすくなります。さらに、糖尿病患者では肝臓がんやすい臓がんなどの悪性腫瘍の合併が多いことも知られています。
糖尿病の治療を行うのはこれらの恐ろしい合併症をくい止め、生活の質を維持し健康寿命を永らえることが目的なのです。
糖尿病の治療
糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法で、その上に薬物療法が成り立っています。
<糖尿病虎の巻> クスリを使わずに血糖値をさげるコツ
・・・食べ方の見直しと運動の励行です。
これには、やり方のコツがあります!
<糖尿病における食べ方>
食べる量、食べる順番、食べる時間、栄養バランスに注意しましょう。
- 食べる量・・・・・おなか8分目!
満腹になる手前で止め、満足できなければ次の食事で何を食べるかあれこれ考えましょう。 - 食べる順番・・・葉の多い野菜、キノコ類、海藻類、大豆製品(納豆、豆腐等)を最初にとり、次に魚・肉類、最後に糖質を取るようにすると食後の血糖値が上昇しにくくなります。
- 食べる時間・・・・朝食は必ず食べ、夕食は午後8時までに食べること!
- 栄養バランス・・・炭水化物を減らし(ごはんなら茶碗に軽く一杯)その代わりに野菜や海藻類、キノコ類のようなカロリーのない食品を多めに(お椀一杯分)とる!
糖尿病においては炭水化物(糖質)が食後の血糖を上げる主な原因となるので、ごはん、パン、麺類の量の調節が重要です!
ちなみに、間食は好ましくありませんが、ピーナツ、チーズ、ヨーグルト(砂糖無)、おでん(ちくわ等練り物以外)であれば血糖上昇が少ないので適量可です。食べるタイミングとしては、食事と食事の間より食後にデザート的に適量とる方がましです。
<糖尿病における運動の仕方>
有酸素運動と軽い筋トレをしましょう!
- 有酸素運動・・・20~30分のウォーキングが好ましいですが、各食後に10分のウォーキングでも効果的がでます。通勤時に遠回りするなど工夫し、できれば毎日、週に3日以上は行いましょう!
- 軽い筋トレ・・・ダンベルなどを使っての軽い筋トレも有酸素運動と組み合わせると効果的です。特に、スクワットのような運動は効果的です。週に2回は行いましょう!
普段から少しでも動くようにすると積もって血糖値は下がるようになります。
動いているときは血糖値がさがっている!と思いながら行ってください。
<糖尿病の薬物療法>
食事・運動療法を行っても血糖値が目標までさがらない場合、糖尿病の薬物療法の適応となります。
近年、インクレチン製剤という新しい糖尿病薬が登場しました。
インクレチンとは消化管で産生されるホルモンで、食事が腸管で吸収される際に血中に分泌され、インスリンを出すように膵臓に働きかけて血糖値を低下させます。
糖尿病においてはこのインクレチン機能が低下しているといわれ、インクレチンの作用を増強させる薬をインクレチン製剤といいます。
この薬剤は単に血糖値を下げるだけでなく他の優れた作用を併せ持っています。単独の使用では低血糖を起こすことがなく、血糖値が高いほど血糖を降下させる効果を発揮します。
体重増加を来さず、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンを抑制し、動物実験では膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)を保護する作用が確認され、さらにβ細胞の増殖・再生効果も期待されています。
このように、従来の糖尿病薬にはなかった有用な作用を持ち、副作用が少なく、糖尿病薬として非常に都合の良い薬であるといえます。
インクレチン製剤の中でもGLP1受容体作動薬は、最近良い治療効果を上げています。この薬剤の特長としては、単独では低血糖をほとんど起こさず血糖を下げ、食欲を抑制し体重が減少する点にあります。米国では減量治療薬として認可されています。また最近の大規模臨床試験では、糖尿病の合併症である心筋梗塞のような心血管イベントや心血管死を抑制したと報告されています。
さらに、最近登場したSGLT2阻害薬は、血中の余分な糖分を尿に流し出して血糖を下げる作用を持った薬剤で、GLP1受容体作動薬と同様、単独ではほとんど低血糖は出現せず体重減少が期待されます。この薬剤も最近の大規模臨床試験において、糖尿病合併法の心血管イベントや心血管死を抑制し腎臓の合併症を抑制したと報告され非常に注目されています。
糖尿病の予防
糖尿病は治療を放置したり、発見が遅れたりして合併症が出現してしまうと生活の質の低下につながり、最悪で心血管病の発症などをきたし命に関わることになりかねません。
特に両親や兄弟に糖尿病がある中高年の方や肥満気味の方、他の生活習慣病を指摘されたことがある方は定期的に健診や人間ドックを受けてください。生活習慣病の背景には日常生活の食事と運動(活動度)が大きな部分を占めています。
食生活の欧米化による生活習慣病の急激な増加とそれによる心血管病などの動脈硬化性疾患の増加は、日本人が古くから行ってきた食生活を見直す警鐘であるとも捉えられます。
糖尿病を正しく理解し、糖尿病の発症や合併症を未然に防ぐよう普段から健康的な生活スタイルを意識していきましょう。
糖尿病と糖尿病予備軍
現在日本の糖尿病人口は1000万人を超えていると推定されています。また、メタボリックシンドロームについてもその数は増加しており、メタボリックシンドロームとその予備軍も含めると2000万人を超えると・・・
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