神戸市の糖尿病患者の現状は?データヘルス計画の中間評価をもとに解説

データヘルス計画に関する画像

「健診で血糖値が高めだと言われてしまった」「糖尿病だと診断された」といった方が身近にいるという状況は、決して珍しくはない時代になりました。

 

令和元年に厚生労働省よって実施された「国民健康・栄養調査」よると、成人の「糖尿病が強く疑われる者」(糖尿病と診断され現在治療中の方を含む)の割合は男性19.7%、女性10.8%であったことが明らかになりました[*1]

 

また、平成30年度「国民医療費の概況」では国民医療費43兆3,949億円のうち糖尿病の医療費は1兆2,059億円であることが報告されています。[※2]

 

この10年間で「糖尿病が強く疑われる者」の有意な増加は見られず、糖尿病そのものの治療費は前年度よりも減少しています。しかし、糖尿病が重症化することで起こる合併症の多様さを考えると、糖尿病の患者数が医療費の増加にかかわっている可能性は少なくないのかもしれません。

 

そんな中、国民の健康づくりに効果的な保健事業の確立のため、国から健康保険組合へ義務付けられた取り組みが「データヘルス計画」です。

 

この記事では、神戸市でも実施されている事業「データヘルス計画」の第2期(平成30年度~令和5年度)中間評価から、糖尿病関連のデータについて解説していきます。

 

[*1] 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」

[*2] 厚生労働省「平成30年度 国民医療費の概況」

 

 

 

 

 

 

神戸市の事業「データヘルス計画」とは?

 

「データヘルス計画」は、国が「日本再復興戦略」として全国の健康保険組合に対して義務付けた取り組みです。

 

神戸市でも、市の国民健康保険加入者を対象として健診結果や受診状況などから健康課題を分析し、効果的かつ効率的な保健事業を進めていくために取り組んでいます。つまり神戸市の国保加入者のさまざまな情報から、病気を未然に防いだり重症化しないようにしたりするための効果的な対策を進めていくための取り組みが、神戸市の実施する「データヘルス計画」なのです。

 

神戸市の「特定健診」やそれに連動した「特定保健指導」も、このデータヘルス計画で方針を決めて実施しています。

 

 

神戸市の糖尿病患者数・医療費は?

神戸市データヘルス計画では、疾患別医療費および患者数を「入院」と「入院外」に分けて統計を取り、医療費を基準とした上位20位を公表しています。

 

令和2年度の中間評価よると、糖尿病は「入院」では上位20位圏外となっているため医療費や患者数、順位の確認はできませんでしたが、「入院外(外来・往診等)」では3位と上位にランクインしていました。[*3]

 

ここでは、神戸市の糖尿病患者数と医療費の占める割合などについて、神戸市データヘルス計画の中間評価のデータをもとにして[*3]詳しく解説していきます。

 

 

神戸市の糖尿病患者数

神戸市の生活習慣病の患者数を見てみると、高血圧性疾患が約51,000人と最も多い数となっています。それに次いで多いのが脂質異常症の約23,000人で、糖尿病はそれに次ぐ第3位の約21,000人でした。

 

また、糖尿病の患者数を年代別で比較をしたところ、60代以降の患者数が50代までの患者数より大幅に増えているという現象がみられました。これは60代以降に糖尿病を発症した方が多かったというよりも、定年退職による国保加入者が増加することによるものであると考えられています。

 

性別での比較では20代・30代ではほぼ同数ですが、40代以降では女性よりも男性の方患者数が多い傾向にありました。

 

 

神戸市の糖尿病の方が占める医療費の割合

次は、医療費の割合を見ていきましょう。

 

まずは、生活習慣病の医療費です。神戸市全体の医療費に占める生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、腎不全、虚血性心疾患、脳血管疾患など)の割合は、平成28年度の結果を若干下回る23.0%。このうち糖尿病の占める割合は15.3%です。

 

さらに糖尿病の患者数と1人当たりの医療費の推移を見てみると、平成28年度以降患者数に減少がみられていますが、1人当たりの医療費はほぼ変化がないようです。この点についての考察は、中間評価では報告されていません。

 

[*3]神戸市「第2期 神戸市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)中間評価

 

 

糖尿病と人工透析患者数の関係は?

神戸市データヘルス計画では人工透析患者の減少も課題として掲げています。糖尿病と人工透析には深い関わりがあることは、ご存じの方も多いですよね。

 

平成28年度のデータによると、神戸市の人工透析患者のうち約45%が糖尿病治療中の方で、糖尿病患者の0.9%が人工透析を受けていると報告されています。[*4]

 

糖尿病を放置すると、自覚症状のないまま進行し重篤な合併症に進展するリスクが高まります。糖尿病の三大合併症と呼ばれる「腎症」「網膜症」「神経障害」は、全身の細い血管に障害を来す合併症です。その他、糖尿病により大きな血管が障害される心疾患や脳血管障害などのリスクも高まるため、糖尿病は全身の疾患につながる病気であるといえるのです。

 

三大合併症の一つ「糖尿病性腎症」が進行すると結果的に人工透析に至ってしまうため、人工透析を減少させるには糖尿病の予防、糖尿病成人症の重症化予防が重要です。

 

今回の神戸市データヘルス計画では、糖尿病性腎症重症化予防事業として以下のような取り組みを行いました。

 

  • 糖尿病治療中断者に対する受診勧奨や保健指導の実施
  • SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)の手法を活用した健康支援とその評価

 

♦SIBとは

行政の事業を民間委託する際に用いられる手法の一つです。SIBは行われた事業の成果を評価し、それに見合った報酬を支払う「成果連動型委託契約」と位置づけられています。

 

治療中断者に対する取り組みについては現在も継続中ですが、SIBを活用した支援・評価については令和元年に終了となっています。SIBを活用した糖尿病重症化予防事業においては、プログラム終了率および生活習慣改善率は目標を大きく上回りましたが、腎機能低下抑制率は目標に到達しませんでした。

[*4]神戸市「第2期 神戸市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)概要版

 

 

 

神戸市の重複受診者には糖尿病の方が多い?

神戸市の医療における課題の一つに「重複受診」「重複服薬」の問題があります。

 

重複受診とは、複数の医療機関で診察を受けていることを指します。さらに、これらの医療機関で同じような成分の薬を複数処方され、内服している状態が重複服薬です。

 

神戸市の重複受診者で最も多いのが糖尿病であることが、平成28年度のデータで報告されています。[*5]

 

重複受診・重複内服は同じような検査や処置、投薬を繰り返すことになるため、体への負担や副作用を招く恐れがあります。また、受診回数が多くなるということはその分医療費もかかり、経済的負担も大きくなります。

 

神戸市データヘルス計画では、重複受診者・重複服薬者に対して啓発(通知)や訪問保健指導を行い、問題を解決しようと取り組んでいます。

 

[*5]神戸市「第2期 神戸市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)概要版

 

 

 

まとめ

「データヘルス計画」は、国民の健康づくりに効果的な保健事業を実施するため、国から健保組合に対して義務づけられた取り組み。神戸市でもさまざまな取り組みを実施しています。

 

今回の記事では、この神戸市のデータヘルス計画の中から糖尿病に関するデータをピックアップして解説してきました。

 

生活習慣病で比較してみると、糖尿病は高血圧、脂質異常症に次ぐ患者数となっており、医療費の割合も15%ほどを占めています。

 

糖尿病は、合併症により腎臓の障害を引き起こし人工透析につながったり心疾患や脳血管疾患のリスクを高めたりすることが知られています。

 

そのため、このデータヘルス計画において糖尿病の発症予防や重症化予防などの対策を講じることは、心臓や脳血管、腎臓の病気など糖尿病以外の疾患の減少につなげることができるといえるでしょう。

 

神戸市データヘルス計画は、現在令和2年度時点の中間評価が報告され、新規の取り組みとして「糖尿病治療中の方に対する保健指導」が計画されています。今後、神戸市が糖尿病治療に対する効果的な事業を確立できるよう期待したいところです。

 

 

監修:上野尚彦 (上野内科・糖尿病クリニック院長)

日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 非常勤講師
日本糖尿病学会 近畿支部評議員

1988年に島根医科大学を卒業後、神戸大学医学部第二内科に入局。神戸大学大学院医学研究科博士号を取得。米国フロリダ大学医学部  博士研究員、神戸海岸病院内科部長などを経て、上野内科・糖尿病クリニックを開院。

 

 
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