体重減少効果のある糖尿病治療薬
体重減少効果のある糖尿病治療薬について
糖尿病の治療においては食事・運動療法が基本ですが、血糖コントロールが悪い場合や
病状により薬物療法が行われます。近年、糖尿病治療薬は進歩を遂げ、内服薬・注射薬に
おいてさまざまな糖尿病治療薬が登場し選択肢も拡がっています。糖尿病治療薬の中には
体重減少が期待できる薬があります。
1)SGLT2阻害剤:SGLT2阻害剤は血中の余分な糖を尿中に排泄して血糖値を下げる
薬です。尿中に糖が出て行き、カロリーが失われる分体重が減ることになります。
さらに、SGLT2阻害剤は糖尿病の合併症でもある心血管疾患と死亡を減少すること
が示され、大きなインパクトを与えました。その他、糖尿病性腎症の進展や脂肪肝
を抑制し、心不全の治療薬にもなっており、SGLT2阻害剤の多面的な効果が注目
されています。
2)GLP1受容体作動薬:GLP1は食物が消化管に入った時に分泌され、インスリン
を分泌させ血糖値を下げる消化管ホルモンです。GLP1受容体作動薬は血糖値を下げる
以外に、胃の消化管運動を抑制し中枢における食欲抑制作用があり体重を減少させる
と考えられています。GLP1受容体作動薬もSGLT2阻害剤と同様、心血管疾患とを減少
することが示され、さらに脂肪肝の改善効果や糖尿病性腎症の進展を抑制させる作用
も確認されています。GLP1受容体作動薬は注射製剤しかありませんでしたが最近では
経口剤も処方可能となりました。米国では肥満治療薬としても承認されています。
監修:上野尚彦 (上野内科・糖尿病クリニック院長)
日本内科学会認定 総合内科専門医
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 非常勤講師
日本糖尿病学会 近畿支部評議員
1988年に島根医科大学を卒業後、神戸大学医学部第二内科に入局。神戸大学大学院医学研究科博士号を取得。米国フロリダ大学医学部 博士研究員、神戸海岸病院内科部長などを経て、上野内科・糖尿病クリニックを開院。