どうして糖尿病になるの? 糖尿病の種類と成因

どうして糖尿病になるの? 糖尿病の種類と成因

 

 

1型糖尿病:

 

糖尿病はその成因によっていくつかの種類に分類されます。1型糖尿病は、膵臓から分泌

 

される血糖値を下げるインスリンが枯渇してしまうことから起こる糖尿病です。1型糖尿

 

病のタイプAは自分の免疫機構が自分自身の膵臓のβ細胞(インスリンを産生する細胞)

 

を破壊してしまう型で、タイプB(特発性)はウィルス感染などを機に発症します。10~

 

20才代に発症することが多く、以前は若年性糖尿病と言われていましたが高齢者でも発

 

症することがあります。1型糖尿病は発症するとインスリン注射が必要ですが、中には

 

1型と同じ自己抗体が陽性で徐々にインスリンが枯渇する緩徐1型糖尿病があり1型

 

糖尿病ほど早く進行せず直ちにインスリンを必要としないタイプもあります。また発症

 

して数日で病状が急激に悪化する劇症1型糖尿病があり、発熱など風邪のような症状の

 

あと口渇感が出現するパターンが多く、治療が遅れると命にかかわる糖尿病のタイプ

 

なので注意が必要です。

 

 

 

糖尿病と糖代謝異常の成因分類

 

Ⅰ. 1

 

膵β細胞の破壊。通常は絶対的インスリン欠乏に至る

 

A.自己免疫性

 

B.特発性

 

Ⅱ. 2

 

インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体でそれにインスリン

 

の相対的不足を伴うものなどがある

 

Ⅲ. その他の特定の機序、疾患によるもの

 

A.    遺伝因子として遺伝子異常が固定されたもの

 

①膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常

 

②インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常

 

B.    他の疾患、条件に伴うもの

 

①  膵外分泌疾患

 

②内分泌疾患

 

③肝疾患

 

④薬剤や化学物質によるもの

 

⑤感染症

 

⑥免疫機序によるまれな病態

 

⑦その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの

 

 

Ⅳ. 妊娠糖尿病

 

 

〔日本糖尿病学会糖尿病診断基準に関する調査検討委員会. 糖尿病55:490, 2012〕

 

 

 

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2012)

 

【必須項目】

 

1. 経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体

 

(ICA)が陽性である。a

 

2. 糖尿病の発症(もしくは診断)時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく、

 

ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない。b

 

判定:上記1、2を満たす場合、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」と診断する。

 

 

a)Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体(IAA)

 

もしくは亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体に関するエビデンスは不十分であるため

 

現段階では診断基準に含まない。

 

b)ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限り

 

ではない。

 

 

【参考項目】

 

1)経過とともにインスリン分泌能が緩徐に低下し、糖尿病の発症(もしくは診断)

 

後3ヶ月を過ぎてからインスリン療法が必要になり、高頻度にインスリン依存状態

 

となる。なお小児科領域では、糖尿病と診断された時点で、ただちに少量

 

(0.5単位/kg体重以下)のインスリン投与を開始することがある。内科領域でも

 

GAD抗体陽性が判明すると、インスリン分泌低下阻止を考慮してインスリン治療

 

がただちに開始されることがある。

 

2)GAD抗体やICAは多くの例で経過とともに陰性化する。

 

3)GAD抗体やICAの抗体価にかかわらず、インスリン分泌能の低下がごく緩徐で

 

あるため、あるいは変化しないため、発症(診断)後10年以上たってもインスリン

 

依存状態まで進行しない例がある。

 

 

日本糖尿病学会 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2012)

 

劇症1型糖尿病診断基準(2012)

 

下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。

 

1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシス

 

に陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める。)

 

2. 初診時の(随時)血糖値が288 mg/dl (16.0 mmol/l) 以上であり、かつHbA1c値

 

(NGSP)<8.7 %*である。

 

3. 発症時の尿中Cペプチド<10 µg/day、または、空腹時血清Cペプチド<0.3 ng/ml

 

かつ グルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5 ng/ml である。

 

*:劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当

 

しない

 

 

<参考所見>

 

A) 原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。

 

B) ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間

 

の症例も存在する。

 

C) 約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、

 

リパー ゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。

 

D) 約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、

 

消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。

 

E) 妊娠に関連して発症することがある。

 

F) HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。

 

 

日本糖尿病学会 1型糖尿病の成因、病態に関する調査研究委員会

 

 

 

著者:上野尚彦 (上野内科・糖尿病クリニック院長)

日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 非常勤講師
日本糖尿病学会 近畿支部評議員

1988年に島根医科大学を卒業後、神戸大学医学部第二内科に入局。神戸大学大学院医学研究科博士号を取得。米国フロリダ大学医学部  博士研究員、神戸海岸病院内科部長などを経て、上野内科・糖尿病クリニックを開院。

 

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